みなさんこんにちは、こしゃるです。
私は東京に家族を残して群馬県で単身赴任中の健康男子です。単身赴任といえば、いかに持て余した時間を潰すかに苦慮するものです。私も、料理や動画視聴、観光やこのブログ執筆など様々なことをやってきましたが、実はいちばん時間を使ってきたのが「読書」です。
こちらに引っ越してきた際、まずは市立図書館に行ってカードを作り予約システムにログインしたものでした。その年の「本屋大賞」や「このミステリーがすごい!」にランクインした作品を中心に図書館で借りて読みましたが、他にも好きな作家や他の人に勧められた本も読んできました。
この一年に読んだすべての本は、合計約70冊。月に平均5冊以上読んだことになります。読むのはゆっくりな方なので1冊あたり6-7時間くらいかかったように思います。ということは実に1年に約450時間くらいの読書時間という計算なります。
中にはHow to本もありますが、今回は文芸作品の中で特に良かったものをランキング形式で紹介してみようと思います。ネタバレもバリバリでお送りしますのでこれから読む方は注意しながらご覧ください!!
では早速5位から発表していきましょう!題して「2024年こしゃるの読書ランキング!」
第5位 ともぐい 河崎秋子/著 新潮社
|
第5位は2024年を代表する「熊小説」であり直木賞受賞作の「ともぐい」です。熊小説というと、三毛別の熊襲撃事件を書いた「慟哭の谷」や熊猟師の姿をありのままに書いたノンフィクション「熊撃ち」などが有名で、圧倒的な熊の迫力や凶暴さ、恐ろしさに鳥肌が立った方も多いと思います。
本作はそのような熊の描写はもちろんですが、何より登場人物の「人間臭さ」がこれでもかと表現されていて引き込まれてしまいます。山に生きる猟師の熊爪は、山の主熊である穴持たずに怪我を負わされ人間社会とのつながりを濃くしていき、陽子を妻として娶ることにします。山小屋で生活を始めた二人は幸せそうに見えますが、最終的に熊爪は陽子に刺されて命を落とします。そこには、自然に生きるものの業や覚悟、人間のしたたかさが描かれていると感じました。
題名の「ともぐい」とは人間も含まれた自然界の中で、命のやり取りを行う様を示したのでしょうか。そう考えると熊爪の最期も不思議と納得のいく感じがします。作者の河崎さんは北海道出身で酪農の経験があり、動物や自然に関する作品が多いそうです。初めて読む作者でしたが、大変読み応えのある作品でした。
第4位 赤と青のエスキース 青山美智子 著 PHP研究所
|
第4位は青山美智子さんの「赤と青のエスキース」でした。レビューによると、「必ず2回読みたくなる感動作」などど書いてありますが、私も時間を空けて2回読むことになりました。それだけ中毒性のある作品だと思います。
レイとブー、立花と円城寺、茜と蒼。そして二人の過去と未来をつなぐ「エスキース」。美術界を背景に描いた熱く切ない大人の恋愛物語ですが、各世代の読者から共感が得られると思います。間の額縁職人のエピソードや漫画作者の話もじんわりきます。最後のジャック・ジャクソン視点から見たエピローグも解決偏となっており清々しい気持ちで本を閉じることができました。この本を読むとメルボルンに行きたくなりますね。
青山さんは「木曜日にはココアを」や「お探し物は図書館まで」などの作品で、心の琴線に触れ温かい感動を呼んでくれます。本作も青山さんの傑作の一つと言えるのではないでしょうか。次の新作も楽しみにしています!
第3位 木挽町のあだ討ち 永井紗野子 著 新潮社
|
第3位は永井紗耶子さんの直木賞、山本周五郎賞の受賞作「木挽町のあだ討ち」です。時代物ですが、読みやすい文体で書かれていて人物像の面白さも相まって一気に読めてしまう作品でした。
ある雪の晩に芝居小屋の前で起きた「あだ討ち」の真相を、それに関わった町人へのインタビュー形式で解き明かしていく時代推理ものです。主人公の菊之助にまつわるエピソードの一つ一つが人情味に溢れていると同時に、当時の生活様式や大衆文化も目に浮かぶようで、まるで映画を見ているような読書感があります。さらに最後に明かされる真相も、誰も悪い人はいないって感じでほんわか終われる素晴らしいストーリー展開だった思います。
「木挽町」とは現在の銀座歌舞伎座のあたりだそうです。(もちろんフィクションですが)時代背景に思いを寄せつつ散歩してみるものいいなあと思いました。
第2位 この夏の星を見る 辻村深月 著 KADOKAWA
|
準優勝の第2位は辻村深月さんの「この夏の星を見る」でした。辻村さんと言えば人間模様を子細に描き心震わせる作品が多く、直木賞の「鍵のない夢をみる」や2018年本屋大賞の「かがみの狐城」などが有名ですが、本作も胸に重りを抱える中高生たちがコロナ感染の渦中に天体観測を通じて心を通わせる青春ストーリーです。
天文部での活動に奔走する茨木の高校生2年生、亜沙。入学したら男子一人の学年になってしまった渋谷の中学生1年生、真宙。家族で経営する旅館と吹奏楽部の友達との軋轢で悩む五島の高校3年生、円華。それぞれが抱える悩みを、オンラインでの天体観測を通じて他の人と関わり合いながら解(ほぐ)していく。その過程がどこか切なく、でもキラキラしていて思わず私も夜空を見上げてしまいそうになる作品でした。
コロナ渦という共通の障害、天体という共通の目的、それを列島を縦断する形で彼らが共有することで得られた一体感や神秘性をうまく使っているなあと思いました。2025年には実写映画化されるそうなので是非観たいと思いました!
第1位 天上の葦 上下 太田愛 著 KADOKAWA
|
栄えある第1位に輝いたのは太田愛さんの「天井の葦 上下」でした!太田愛さんはテレビドラマ「相棒」や「トリック」などの脚本を書かれていた作家さんで、私も父親に勧められて始めて小説を手に取りました。これまで「犯罪者」、「幻夏」、「未明の砦」などの小説を書いていますが、どれも産業廃棄物、冤罪、労働運動などの社会派な話題が背景にあるので重厚な読み応えのあるクライムサスペンスです。
本作も主人公が、渋谷のスクランブル交差点で空を指さして絶命した老人の調査を依頼されるところから、公安警察官の突然の失踪、大手テレビ局の報道問題と多方面に話は展開します。ストーリーすべてがうまく組立られていて、スピーディーに展開するので重厚でありながら没頭して読める作品になっています。そして屈強な青年「修司」、日蔭な探偵「鑓水」、はみだし刑事「相馬」のトリオの人物像が魅力的に描かれていて読者を飽きさせません。読み終えた時には絶大な感動と達成感が得られる超大作でした!!
公式サイトによると太田愛さんの新作長編「ヨハネたちの冠」の連載が2024年10月から「別冊文藝春秋」で始まっているそうです。書籍化されたら是非読んでみたいと思います。
番外編:開業医の正体 松永正訓 著 CCCメディアハウス
|
最期に番外編として、松永正訓先生の「開業医の正体」を紹介したいと思います。小児外科であった松永先生が診療所を開業後、患者やスタッフとのやり取りの中で考えたことをエッセイのようにまとめた本です。医師目線ではクリニック開業とはどんな感じなのか、報酬や時間の使い方も含めて大変参考になりますし、患者にとっては「良い開業医」と巡り合うためのヒントとして医師が考えていることが手に取るようにわかると思います。
開業関連の書籍や患者への啓もう的な書籍はたくさんありますが、ここまで実経験を率直に書いてあるものは少ないと思います。私は開業する予定はサラサラありませんが、文才も含めて大変ためになる本だと思います。
2024年の読書ランキング、どうだったでしょうか。本当は「光のとこにいてね」も良かったし本屋大賞の「成瀬」も痛快だったし、安定の東野作品も載せたかったのですが今回はこの5作になりました。2025年もたくさん読んでいこうと思います!